Bergmanfestivalen på Dramaten:1 <レポート:ベルイマン・フェスティバル@ドラマーテン その2>

遅くなりました。ベルイマン・フェスティバルのレポート その2です

Höstsonaten『秋のソナタ』

突然ですが、私の卒論は『日本におけるイングマル・ベルイマン受容―「秋のソナタ」の中の<母性>に注目して―』と冠したものでした。それほど本作は特に私にとって大切な作品のひとつです。

舞台化作品も多く、日本でも2013年秋に満島ひかり、佐藤オリエ主演による公演がありました。東京だったので見逃したのですが、これは私の知る限りでは、ベルイマン台本の国内初の舞台化です。

スウェーデンでは、過去に2014年9月のKulturhuset Stadsteatern (文化会館市立劇場)での公演、および昨年6月フォール島ベルイマンセンターでのベルイマンウィーク(Bergmanveckan)開催中の公演を観たことがあります。

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(↑2014年9月Kulturhuset Stadsteaternでの公演。劇場HPより転載。リンクは写真をクリック) 

この公演は、映画版よりもだいぶライトな演出で、シャルロッテ(映画版ではイングリッド・バーグマン)を演じた女優さんの演技は結構コミカルな所も多く、観客席から笑いが起こることもしばしばでした。

エーヴァ(映画版ではリヴ・ウルマン)とヘレーナ(映画版ではレーナ・ニーマン)を同一化させる、あるいは、映画版のかの名場面・ショパンのプレリュード合戦では、ピアノを舞台袖に隠して演奏している者を見せない、といった演出は面白くはありました。が、個人的には映画版のエネルギーとは全くベクトルの違う、マイルドな仕上がりだったのがあまり気に入らず。。。

フォール島の方は簡素な舞台装置、演出で、確かヘレーナは登場させていなかったはず。台本を再構成して、さらに台詞の比重を強めた演出でしたが、こちらもさほど印象に残らなかったのが正直なところ。 

 今回のベルイマン・フェスティバルでのドイツの劇団による舞台は、現地で公演中の頃から、衣装・舞台装置の写真に強くひきつけられていました。エーヴァにこんな大人っぽい黒いドレス↓を着せているところなど、かなり解釈が異なるのではないかと期待していました。 

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(Dramatenのサイトから。リンクは写真をクリック)

予想は的中、凄まじい舞台でした、これは。

かなり高さのある舞台装置で、複数の部屋をイレギュラーに積み重ねたような構造で、頻繁に回転しました。 

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(ドイツの劇団の方のサイトより転載。リンクは写真をクリック)

もう写真からして暗さ加減が伝わってくると思います(笑)。

中盤くらいまでは、映画とは異なる方向性で、映画版を遥かに上回る圧迫感にかなり酔いしれていました。

特に感心したのは、前述のプレリュード合戦。

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(同じく劇団サイトより転載)

この写真だと分かりにくいのですが、このシーンの直前に幕が下りてきて、演奏が始まるとその幕にリアルタイムで役者二人の演技を映像で映し出すという演出でした。多分ピアノにカメラが仕掛けてあったんでしょうね。

演劇でありながら、映画同様のクローズアップでの表現を可能にした秀逸な思い付きでした。映画の方があまりにも名場面なので、処理が難しいところだと思うのですが、かなり意欲的にシャルロッテの圧力を表現していました。映画版ではシャルロッテが演奏する際、エーヴァと横並びになるのですが、こちらではエーヴァの背後にシャルロッテを立たせ、娘にのしかかるような形で演奏をさせていました。

このへんくらいまではかなりいい線いっている!とうなっていたのですが。

うーん、、、台詞がスウェーデン語と比べてきつい響きのドイツ語になっている点もありますし、先述のように、シャルロッテの抑圧的なキャラクターを過度に強調しすぎている点もあるのですが、一言でいうとちょっとやりすぎた感が…。

後半はリヴ・ウルマンのネチネチした責め方とは違い、エーヴァが過激にシャルロッテという人間を蹂躙しまくります。ヘレーナもただひたすらシャルロッテの恐怖の象徴のような扱いで、映画版のように彼女の存在が救いに全くなりません。

クライマックスはほぼホラー映画のようなおぞましさ。

もうやめてくれーというレベルで、観終わったらぐったり疲れてしまいました。

エーヴァの死んだ息子エーリクを舞台上にときどき登場させていたのも、よい着眼点だったと思うのですが、全体的に見ると辛いだけの舞台だったような…。「遅くはない」と和解を願うエーヴァの最後の手紙の文句も虚しく響くだけ。殺伐としたエンディングでした。

とはいえ、これまで観た3公演ではインパクトは圧倒的でした。ベルイマン台本でありながら完全に異なる世界を構築しおおせた点は、素晴らしかったと思います。ここまで違う解釈のものを見られたのはよい体験でした。