Mitt rum, Bergman och jag 部屋とバリマンと私

ストックホルム大学シネマ・スタディーズ修士課程に留学中の筆者がベルイマンを中心に色々綴ることを目指していたブログです。全然更新できなかったので、一旦終了してもっと自分が続けやすいブログをリニューアルオープン予定です。

Bergmanfestivalen på Dramaten:1 <レポート:ベルイマン・フェスティバル@ドラマーテン その1>

長い間更新をしていなかった間に、無事ストックホルム大学シネマ・スタディーズ・マスタープログラムに進学し、ブログの引っ越しをしていました。

こちらに着いてそろそろ3週間になるのですが、時差ボケや気候の変化などでいきなり体調を崩してしまい、渡航前から楽しみにしていたBergmanfestivalenの公演を、かなりの数見逃してしまいました。

とはいえ、レポートをしないわけにはまいりません。

そもそもBergmanfestivalen<ベルイマンフェスティバル>とは?

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第一回ベルイマンフェスティバルが開催されたのは、2009年。「ベルイマン的な持ち味の芝居を世界中から招聘することで、王立劇場(通称:ドラマーテン)を同時代の国内外の舞台芸術において意義ある存在にしていこうという理念のもと」(Dramaten公式サイトより)に幕を開けました。大きな成功を収めた結果、2012年に第二回フェスティバルが開催されました。ベルイマン自身の作品の舞台化が多かった一回目に比べ、二回目はより視野を広げ、ヨーロッパ各国からオリジナル作品や、ストリンドバリ、ドストエフスキーの翻案作品など、バラエティに富んだ内容だったようです。

 

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そして、4年後の今年2016年再び開催の運びとなったわけです。よりによって私がストックホルムに来る年に重なるとは。勝手に運命的なものを感じております(笑)。

 

2016年のプログラムは?

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ベルイマン作品の舞台化、ベルイマン作品にインスピレーションを得たオリジナル作品、ベルイマンと直接的な関係はないが現代社会の諸問題に一石を投じるような意欲的な作品の数々が上演されるとともに、多種多様なセミナー、映画上映など、盛りだくさんの内容でした。公演は、客演のものと、ドラマーテン自体のレパートリーのプレミアと両方含まれ、ベルギー、オランダ、ドイツ、イタリア、デンマーク、ノルウェーなど様々な国の劇団が招かれました。ストックホルムの演劇情報を伝えるサイトのこの記事によると、今回の観客動員数が過去最高だったようで、次回2018年(ベルイマン生誕100年のアニバーサリー)の開催に向け、幸先のよい結果になったようです。

 

プログラム全てをここに挙げるわけにはいきませんが、私が個人的に興味があった(がほとんどを見逃した)ものを紹介します。ドラマーテンのレパートリーはフェスティバル終了後も上演が続くので、スケジュールと相談しながら何としても見ておかねば。

ベルイマン作品

Den Goda Viljan<善意>

邦題は『愛の風景』*1でしたね。現ドラマーテン芸術監督のEirik Stubøによる演出。

 

Höstsonaten<秋のソナタ>

ドイツ・ベルリンの劇団による客演。これはヨーテボリ留学時にドイツまで観に行こうかと思っていたほど興味があったので、念願叶いました。私のベルイマンフェスティバルデビュー作品になりました。その2で詳しくレビューします。

 

Enskilda Samtal<ふたりだけの対話>

上の『愛の風景』の後日談のような作品で、ベルイマンの両親を再び主人公に据えたものです。リヴ・ウルマンの監督で1996年にテレビシリーズとして映像化されました。映像版も大変良い出来でしたが、今回リヴが母国ノルウェーで演出したものを、いわばベルイマンのお膝元にひっさげてきた形です。芝居自体は残念ながら見逃しましたが、彼女の対話イベントを最前列で観ることができました。しかし、今回は彼女はノルウェー語でお話されたため、私には50~60%くらいしか言っていることが分かりませんでした。冒頭にリヴ自身が「ノルウェー語分からない人は?」と冗談めかして客席に問いかけると、「どうぞどうぞノルウェー語で問題ありませんよ」といったような答えが返って来たため、こうなった次第。とはいえ、もともとはノルウェー人の彼女が母国語を話している姿を見たのが、実は私は初めてだったので新鮮でした。映画版から暫く経った今、ベルイマン自身、さらには彼の両親の日記を読んで、かなり脚色(潤色?)を加えたと語っていました。また、公演の宣伝においてベルイマンの名前だけが前面に出され、リヴが演出であることが一部では伝えられなかったことなどにも触れていました。

 

Efter Repetitionen<リハーサルの後で>

日本ではTV放送とDVDのリリースだけの作品。もともとTV向けの作品で、エールランド・ヨーセフソン(Erland Josefsson)とレーナ・オリーン(Lena Olin)、イングリッド・チュリーン(Ingrid Thulin)の3人芝居でした。今回はベルギーの劇団によるフランス語版。上の<秋のソナタ>もそうだったのですが、外国語での上演+字幕は英語という、完全なる非スウェーデン的条件下でベルイマン作品を観るという珍しい体験をしました。そしてさらに珍しかったのは、公演中に突如火災警報が鳴り響き、観客・役者・スタッフ一同屋外退避したことです(!)

消防車までかけつけての大騒ぎだったのですが(友人によれば、Dramatenは重要な歴史的建造物なので対応が早かったんだろうとこのこと)、誤報だったようで、暫くしてからまた舞台に戻るというとんでもない展開に。中断した個所から少し巻き戻しての再開になりました。役者陣はよく集中力を取り戻せたなぁと素人じみた感想ですが、感心。ただ、肝心の芝居の方はちょっと技巧(舞台上の字幕に観客の注意を向けて英訳を読み上げるというメタ的手法)が過ぎる印象で、あまり心には残りませんでした。正直なところ少しチケット代がもったいなかったと感じてしまいました。

 

Larmar och gör sig till<大騒ぎしてごまをする>*2

これはもう、本当に行けなかったのが悔しくてなりません。もともとはTV作品で、そちらの方がSVTのオープン・アーカイヴのサイト上での昨年冬のベルイマン特集の際に公開されていたのですが、このサイト上の作品はスウェーデン国外では観られないため、日本で涙を呑んでおりました。今回の芝居は、ドラマーテン内ではなく、設立200周年を迎えたドロットニングホルム宮廷劇場(Drottningholms slottsteater)での上演で、しかも上演後には宮殿内の公園で『魔笛』の屋外上映もあるという、この上ない企画だったのです。風邪ウイルスに侵されてしまった我が身が口惜しい限り。

 

この他、『ある結婚の風景』(これもベルギーの劇団)や、『ペルソナ』に着想を得たオリジナル作品Deformerad Personaなどが、ベルイマンと直接関連のある作品でした。

その他

Falla ur Tiden<時間からこぼれ落ちて>

ドラマーテンのレパートリーのプレミア上演で、映画・演劇界双方で活躍する才媛スサンネ・オステン(Suzanne Osten)女史の演出による、イスラエルの作家David Grossmanの小説の翻案作品です。これも絶対に見逃せない作品だったのですが、フェスティバル期間中の公演は軒並みソールドアウト。幸い11月まで公演は続くので別の機会に。

 

Hedda Gabler<ヘッダ・ガーブレル>

言わずと知れた、イプセンの名作。これも見逃しましたが、友人が劇場のレセプションで働いており、何とタダ券を用意して頂きました。お互いのスケジュールの兼ね合いで10月までお預けですが、楽しみです。多謝。

セミナー、イベント

気になっていたのは、著名な演劇評論家のLeif Zernによる、女優レーナ・エンドレ(Lena Endre)などのゲストを招いてのセミナーだったのですが、折角チケットの追加販売があったにもかかわらず、体調不良で行けず…。無念。

 

先述のオステンによるセミナーも興味がありましたが、やはり体調不良で無理。

 

初体験のベルイマンフェスティバル、実際の内容は?

結局、観られた公演は<秋のソナタ>と<リハーサルの後で>だけ、そのほかに、リヴ・ウルマンの対話イベント、映画上映("Dear Director", "Intermezzo", "Tresspassing Bergman"のドキュメンタリー3本立て)だけでした。このうち、インパクトの強かった<秋のソナタ>について、その2で詳しく綴ります。 

*1:『ある結婚の風景』にかけたのか、何とも陳腐なものでしたが、この後スサンネ・ビアの作品に『ある愛の風景』という邦題がついてしまったため、余計こんがらがることに。珍妙な邦題はやめてほしいところです。

*2:英題はIn the presence of a clownという全く違ったものになっています。原題の方はマクベスの第五幕五場からの引用のようです。和訳がまずいのですがご勘弁ください