Mitt rum, Bergman och jag 部屋とバリマンと私

ストックホルム大学シネマ・スタディーズ修士課程に留学中の筆者がスウェーデンの映画を中心に色々綴ることを目指しているブログです。

Tystnaden

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10/18は、グループプレゼンテーションが終わったご褒美(?)に、Kulturhuset(文化会館)内の映画館(Klarabion)に『沈黙(Tystnaden)』を観に行きました。

 

これはSvenska Filminstitutによる、"Film som förändrade Sverige"(スウェーデンを変えた映画)と銘打った4回連続上映企画で、今回が2回目です。

 

上映の前にトークセッションがあり、今回のゲストは作家でジャーナリストのMaria Svelandさん*1と、日本でももうすぐ公開される"En man som heter Ove"(「幸せなひとりぼっち」という邦題に決まったようです)でグルドバッゲの助演女優賞にノミネートされた、イラン出身のバハー・パール(Bahar Pars)さん。*2

 

映画あるいはベルイマン自身に対して、Mariaさんはどちらかというと否定的、Baharさんは肯定的な視点でそれぞれの印象を語っていました。

 

*1:デビュー作”Bitterfittan”はかなりフェミニズム色の強い作品で議論を呼んだようですが、他国で翻訳版が出版されたり、国内で舞台化されたりしているそうです。ラジオやテレビで手掛けた番組が高い評価を受け、2010年にはRoks pris för Årets kvinnogärningを受賞。作家またジャーナリストとして、性・階級・セクシュアリティをテーマとして執筆活動を続けています。

*2:10歳のとき、イランから難民としてスウェーデンに渡った彼女がキャリアを振り返っているインタビューはこちら。もともと舞台の方で実績のある人でOveで一般の人にも知られる顔になったということのよう。最近はDramatenでも活躍中で、来年1月Figaros bröllopに出演するようです

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Bergmanfestivalen på Dramaten:1 <レポート:ベルイマン・フェスティバル@ドラマーテン その2>

遅くなりました。ベルイマン・フェスティバルのレポート その2です

Höstsonaten『秋のソナタ』

突然ですが、私の卒論は『日本におけるイングマル・ベルイマン受容―「秋のソナタ」の中の<母性>に注目して―』と冠したものでした。それほど本作は特に私にとって大切な作品のひとつです。

舞台化作品も多く、日本でも2013年秋に満島ひかり、佐藤オリエ主演による公演がありました。東京だったので見逃したのですが、これは私の知る限りでは、ベルイマン台本の国内初の舞台化です。

スウェーデンでは、過去に2014年9月のKulturhuset Stadsteatern (文化会館市立劇場)での公演、および昨年6月フォール島ベルイマンセンターでのベルイマンウィーク(Bergmanveckan)開催中の公演を観たことがあります。

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(↑2014年9月Kulturhuset Stadsteaternでの公演。劇場HPより転載。リンクは写真をクリック) 

この公演は、映画版よりもだいぶライトな演出で、シャルロッテ(映画版ではイングリッド・バーグマン)を演じた女優さんの演技は結構コミカルな所も多く、観客席から笑いが起こることもしばしばでした。

エーヴァ(映画版ではリヴ・ウルマン)とヘレーナ(映画版ではレーナ・ニーマン)を同一化させる、あるいは、映画版のかの名場面・ショパンのプレリュード合戦では、ピアノを舞台袖に隠して演奏している者を見せない、といった演出は面白くはありました。が、個人的には映画版のエネルギーとは全くベクトルの違う、マイルドな仕上がりだったのがあまり気に入らず。。。

フォール島の方は簡素な舞台装置、演出で、確かヘレーナは登場させていなかったはず。台本を再構成して、さらに台詞の比重を強めた演出でしたが、こちらもさほど印象に残らなかったのが正直なところ。 

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Bergmanfestivalen på Dramaten:1 <レポート:ベルイマン・フェスティバル@ドラマーテン その1>

長い間更新をしていなかった間に、無事ストックホルム大学シネマ・スタディーズ・マスタープログラムに進学し、ブログの引っ越しをしていました。

こちらに着いてそろそろ3週間になるのですが、時差ボケや気候の変化などでいきなり体調を崩してしまい、渡航前から楽しみにしていたBergmanfestivalenの公演を、かなりの数見逃してしまいました。

とはいえ、レポートをしないわけにはまいりません。

そもそもBergmanfestivalen<ベルイマンフェスティバル>とは?

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第一回ベルイマンフェスティバルが開催されたのは、2009年。「ベルイマン的な持ち味の芝居を世界中から招聘することで、王立劇場(通称:ドラマーテン)を同時代の国内外の舞台芸術において意義ある存在にしていこうという理念のもと」(Dramaten公式サイトより)に幕を開けました。大きな成功を収めた結果、2012年に第二回フェスティバルが開催されました。ベルイマン自身の作品の舞台化が多かった一回目に比べ、二回目はより視野を広げ、ヨーロッパ各国からオリジナル作品や、ストリンドバリ、ドストエフスキーの翻案作品など、バラエティに富んだ内容だったようです。

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I begynnelsen var ordet

去年スウェーデンにいたころに購入していたのに、今の今まで読めていなかったMaaretの著作、I begynnelsen var ordet: Ingmar Bergman och hans tidiga författarskap(『はじめに言葉ありき: イングマル・ベルイマンと初期の執筆活動』)を漸く読了しました。

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題名の通り、これまでほとんどが未発表だった若き日のベルイマンの著作を紹介しながら、<作家>としての発展を追うという内容なのですが、実は昨年Maaretご本人とお会いした際にも「読んだ?」と聞かれていながらずっと読んでいなかったという体たらく…。私の卒論には直接関係ないかな、と思っていたのですが、読んでみて、Maaretが聞いた理由が少し分かりました(後で詳述)。

Revisitedの記事でも簡単に触れたのですが、この本のきっかけは、Maaretがベルイマン本人から、フォール島の自宅の一室に、本人曰く「すげえゴミの山」(本書、p.12)になっている「ありとあらゆる」原稿・写真・創作ノートその他もろもろがあるのだが、見てみないか、と持ちかけられたことです。

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Chefen Fru Ingeborg

今日は、読み終わったのがだいぶ前になって記憶が薄れつつある、ヤルマル・バリマン(Hjalmar Bergman)の長編小説 Chefen Fru Ingeborg について書きます。

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読むきっかけになったのは、言うまでもなくベルイマンです。イングリッド・バーグマンが、同郷のベルイマンと初めて一緒に仕事をしたのは『秋のソナタ』(Höstsonaten)ですが、実はそれ以前に別の映画の計画があったのです。よく引用される話ですが、Bilder(p.286)でベルイマン自身が振り返っているように、1973年『叫びとささやき』の上映のためにカンヌ国際映画祭を訪れていたベルイマンのポケットに、その年の審査員長だったイングリッドが短い手紙を突っ込んだそうです。それは、以前に彼女を主演にしたChefen Fru Ingeborgの映画化を計画していたことを思い出させる内容のものでした。

これ以外にも、バリマン(ちなみにベルイマンもバーグマンもバリマンもみんな同じバリマンです。ややこしいからカタカナ表記がこういうときは便利ですね・笑)とベルイマンは深い縁があります。

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INGMAR BERGMAN: The Cinema as Mistress

読了してるのに記事を書けていなかった本がもう一冊。Philip Mosley著Ingmar Bergman: The Cinema as Mistressです。

 

著者のMosleyは現在はPenn State Worthington Scranton所属の比較文学の教授だそうです。翻訳家として活躍されているようですが、映画についての著書は本書とSplit Screen: Belgian Cinema and Cultural Identityとのこと。

本書は初版が1981年なので、『ファニーとアレクサンデル』の前までの作品しか扱われていません。正直なところ、現時点の私にあまり参考になるところはないなあという印象だったのですが、1981年時点での標準的なベルイマン理解の一つとして見ると面白いなと思いました。

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Bilder

今日紹介するのはベルイマン自身の著作、Bilderです。(スウェーデンの大手書籍通販サイトBokus.comではもはや売り切れになってました!)

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本書は英訳が出ていて、そちらのタイトルはImages: My Life in Filmになっていますが、スウェーデン語の”bild”はちょうど英語の”image”の色んな含意を考えると日本語でぴったり合致する語がないのと同様、この場合一語では訳しにくいように思います。小松弘先生が著作『ベルイマン (Century Books―人と思想)』のまえがきで簡単に本書をご紹介されているのですが、ストレートに『映像』と訳されていますね。

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