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Cinema Scandinavia 『ファニーとアレクサンデル』劇評

マスタープログラムでのクラスメイトが友人と立ち上げた雑誌、Cinema Scandinaviaの最新号に、以前このブログで書いた↓ドラマーテンでの『ファニーとアレクサンデル』の劇評を寄稿しました。

mittrumbergmanochjag.hatenablog.com

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Nordic Theatre: Ingmar Bergman’s Fanny and Alexander on the Swedish stageとしてコンテンツに載っています。)

クラスメイトの彼女は行動力の塊のような超アクティブな人で(私とは正反対)、フリーランスのジャーナリストとして、この雑誌だけでなく、色々なインタビュー記事を書いたりしています。この芝居を一緒に観に行ったこともあって、彼女が声をかけてくれたおかげで、雑誌デビューした私です・笑。

最近になってようやくこちらでの生活に少し余裕が出てきた感じがするので、これからも機会を見つけて、こちらの雑誌に寄稿させていただきたいなと思っています。

購入はこちらから。デジタル版と紙媒体と両方あります。

(記念に自分用に紙媒体のが欲しくて今日取り扱っているという書店に行ったのですが、最新号がありませんでした…。早く手に入れなければ。。。)

以上、宣伝でした。

 

Vingarne『翼』(1916)

もう2ヶ月以上も更新が止まっていました…。うむむ。。。

その間に色々起こり、今現在この記事は<ベルイマンの島>ゴットランド北に位置するフォール島にて書いています。実は、紆余曲折を経て、当地のBergmancenter バリマン・センターで4月からインターンシップに参加していました。あと数日でストックホルムに戻ります。バリマンセンターについては後日まとめて紹介します。

島に来てからは王立図書館に行けないので、持参したDVDを全部観終わった後は、速度の遅い島のインターネット環境が唯一ストリーミングを許してくれるのがYouTubeのみなので、そこにアップされている画質の悪い映画ばかり観ていました。

 

さて、今日は珍しくサイレント映画の紹介。

Vingarne『翼』(1916)

字幕がないのでサイレント映画とは言えスウェーデン語が分からないとちょっとあらすじを追うのが難しいかもしれません。

www.youtube.com

監督:マウリッツ・スティッレル

出演:エーギル・アイデ、ラーシュ・ハンソン、リリ・ベック、アルビン・ラヴェーン

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バリマン+モランデルその1『別れて』(Frånskild, 1951)

きゃー、また更新が止まっていましたわ・汗。

ここ1ヶ月ほどの私は、授業のない日は毎朝王立図書館に通っては視聴覚資料コーナーでDVD化されていない古いスウェーデン映画を観るのが習慣になっております。

今年中に最低でも300本、スウェーデン映画を観ると決意したのですが、計画的に観ていかないとなかなか消化できないので、頑張ります。

今日紹介するのは、グスタフ・モランデル(Gustaf Molander, 1988-1973)とバリマンのコラボレーション作品の1本『別れて』*1(Frånskild, 1951)です。

とってもいい作品でいたく感銘を受けたのですが、テレビ放送された時の録画しかない状態で、画質が悪いのが残念でした。

『別れて』(Frånskild, 1951

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51年の作品にして、最近流行の(!?)いわゆる熟年離婚を扱っています。

<あらすじ>

専業主婦のヤットルードは、20年連れ添ったエンジニアの夫トーレから突然離婚を切り出される。トーレは、専業主婦の妻と違い、仕事上の関心を共有できる同僚の女性セシリアとの再婚を望んでいたのだ。娘のエルシーは既に結婚し家を出ているため、独り身になったヤットルードは未亡人ノデーリウス夫人のもとで下宿人として暮らし始める。同じ屋根の下に暮らす夫人の息子・若き医師バッティルは婚約者マリアンヌがいるが、孤独なヤットルードを励ますうち、次第に彼女に惹かれていく。バッティルの勧めでデパートでの仕事を始め、少しずつ元気を取り戻していくヤットルードも、息子ほど年の離れたバッティルに心を寄せ始めるのだった…。

*1:確か三木さんは「離婚」とストレートに訳されていたと思うのですが、ちょっと詩的に(?)「別れて」にしてみました

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Beröringen/ The Touch(1971)

バリマン作品自体について書くのは、実は初めてですね。

表題作"Beröringen"/"The Touch"は、アメリカとスウェーデンとの共同製作の、英語のバリマン映画(もう一本が『蛇の卵』)で、DVDが手に入らず、実は今まで観たことがなかったのです。(You TubeにTVの画面をビデオで撮った映像があるにはあったのですが、あまりに動画環境が悪すぎて諦めていました。)

Filmhusetの図書館にも置いていない映画も、王立図書館(Kungliga Biblioteket)の視聴覚資料室で観ることができるということに漸く気がついたのが先週なのですが(遅い)、おかげさまで遂に観ることができました。

しかし、バリマン本人の言葉に違わず、これは駄作と言わざるを得ないのが正直な感想です。とはいえ、異色のバリマン作品で、観たことがある方は日本では少ないと思うので、以下にまとめてみます。

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あらすじ

専業主婦のカレン(ビビ・アンデション)は、医師の夫・アンドレーアス(マックス・フォン・シドウ)と二人の子供と裕福だが平凡で穏やかな生活を送っている。病院で母を看取って泣いているところを、偶然居合わせたアメリカ人の考古学者・デイヴィッド(エリオット・グールド)に声をかけられる。彼は、アンドレーアスが処置をした患者であり、夕食に彼を招いたことがきっかけで、カレンはふとした思いつきのように彼と不倫の関係を持ち始める。しかしデイヴィッドは精神的に不安定で、二人の関係は初めから穏やかなものではなかった。デイヴィッドは、ブルジョワ家庭のぬるま湯に浸かって、ルーティンとしての家事を優先するカレンを非難し、時には暴力を振るう。それでも次第に心を通わせ始める二人。その関係を知ったアンドレーアスが、逢瀬の場に姿を現した時、デイヴィッドが実は自殺未遂で搬送されたことが発覚する。夫との家庭生活と愛人との間を揺れ惑うカレンが、どちらが父親か分からない子を身ごもる一方、デイヴィッドは彼女から逃げるようにロンドンへと旅立っていた。夫から叱責を受けながらも、ロンドンを訪ねるカレン。そこで彼の妹と出会ったカレンは、彼との未来を選ぶより家庭生活へ戻るべきだと悟る。彼女無しでは生きられない、二人で新生活を始めようと真摯に訴えるデイヴィッドを退けるしかできない彼女に投げつけられたのは、「君は嘘をついているんだ!」という言葉だった。

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Guldbagge i Bästa kvinnliga huvudroll till Maria Sundbom (グルドバッゲ賞最優秀主演女優賞 マリーア・スンドボム)

昨日は、グルドバッゲ(Guldbagge:日本ではゴールデン・ビートル賞と呼ばれていますが、個人的には何でも英語に直すのが気に食わなかったりするのです笑)の授賞式でした。

電車の中でスマホでちょこちょこ見つつ、帰宅後も夕飯を食べつつ見ていたのですが、勉強もあったので、カティンカ・ファラゴー(Katinka Faragó)が名誉賞を受賞したところで切り上げました。

カティンカは「バリマンの右手(日本語だと「右腕」ですが)」と呼ばれ、17歳の時『女たちの夢(Kvinnodröm:日本未公開)』で初めてバリマンと顔を合わせて以来、30年にも渡ってスクリプトガール、監督アシスタントとして制作現場を支えてきた女性です。他、プロデューサーとしてスウェーデン映画界で活躍してきた功績を讃えられての受賞だと思われます。おめでとうございます。

さて、実は恥ずかしながら、わたくし作品賞のノミネート作品を全て見逃した状態なので、これについては触れません。。。メディアの評判から言って受賞作"Jätten"(巨人)が獲るだろうなとは思っていましたがその通りになりました。観よう観ようと思って見逃した作品です。後日観たいと思います。

逆に嬉しかったのが、最優秀主演女優賞を「女の子、ママ、悪魔たち(Flickan, mamman och demonerna)」の主演マリーア・スンドボムが受賞したことです。

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本作は、昨年の春頃かなり話題になっていた作品で、スウェーデンに来たらまず観たかったものの一つでした。劇場上映は終わってしまっていたのでDVDで観ました。

監督スサンネ・オステン(Suzanne Osten)は私の大好きな映画監督・舞台演出家。スウェーデン映画協会の子供映画アンバサダーを数年前から務めているのですが、そんな彼女の作った子供をメインターゲットにした映画である本作、何と15歳以上からという年齢制限を受けてしまったのです。

これに憤慨した彼女の実力行使で、結局公開までに11歳に引き下げられました(その顛末はこちら)。

なぜ制限がついてしまったのか?

映画が描くのは、マリーア演じる精神性疾患を患う母親と、マリーアの実の娘さん演じる小学生の娘の格闘です。母親の病気は統合失調症かと推測されるのですが、はっきりとした病名は分かりません。彼女が精神のバランスを崩し、娘を連れて誰にも引っ越し先を告げずに自宅を出ていってしまったことから二人の崩壊した日常生活が始まります。母親の妄想が見せる<悪魔たち>の描写、娘の経験する不穏な日常の雰囲気が子供には怖いだろうというのが、年齢制限の根拠だったようです。

本作については、スサンネのキャリア共々ずーっとちゃんと書きたいと思っていたのですが、今日のところはとりあえず、マリーアに祝福を送るにとどめておきます。

もともとスサンネは私の中で重要度が非常に高いスウェーデンの映画人だったのですが、それに拍車をかけることになったのが、彼女がバリマンの未発表脚本のラジオドラマを手がけたこと。映画化も予定されていることなど含めて、日本のメディアでも朝日などが報じていたみたいですね。この大学生のライターさんがもっと詳しい記事を書いていたようです。うーむ、私は何せノロいのでとうの昔に先を越されてますな。

とはいえ、スサンネは日本ではほぼ全く知られていないような状態なので、後日改めてしっかりと書きたいと思います。 

(写真はリンク先スウェーデンラジオHPの記事より転載)

Hedda Gabler「ヘッダ・ガーブレル」@ドラマーテン

遅ればせながら明けましておめでとうございます。

今年はもっと頻繁にブログを更新したいと思っています。

これから一週間に最低一記事更新を目指します。(…頑張ります!)

 

さて、まずは昨年中に書けなかった記事を消化するところから始めていきます。

ご紹介する「ヘッダ・ガーブレル」は、私は昨年10月にドラマーテンのlejonkulanという表玄関とは別の横から入る小さめの舞台で観ましたが、大ホール(Stora Scenen)の方に舞台を移して3月まで公演が続くようです。

「人形の家」よりのノラよりももっと激情的に家庭生活からの離脱を追求するヘッダの姿を描いたイプセンの原作戯曲は、古典中の古典。ベルイマンとも縁の深い作品で、ドラマーテンでGetrud Fridh(ヤットルード・フリード:『野いちご』のイーサク・ボリの奥さんといえば分かりやすいかもしれません)を主演に迎えた1964年版、ロンドンのケンブリッジ・シアターでマギー・スミス主演の1970年版、ミュンヘンのレジデンツ・シアターでChristine Buchegger(日本では『夢の中の人生』というタイトルでVHS・DVDリリースのみのドイツ亡命中の作品で、主人公の妻を演じた女優)主演の1979年版、と3回演出を手掛けています。(Stiftelsen Ingmar BergmanのHP参照)

今回の演出は、女優・演出家のアンナ・ペッテション(Anna Petterson)によるもの。彼女自身1998年にストックホルム市立劇場でタイトルロールを演じたそうです。2012年ストリンドバリ・インティーマ・テアーテル(Strindbergs Intima Teater)での意欲的な「令嬢ジュリー」が高く評価されたそうで、実際に公演をご覧になったお知り合いの方も絶賛していました。

主演は2015年にマルメの演劇学校を出たばかりの若手、エレクトラ・ハルマン(Electra Hallman)。

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不敵な笑みと鋭い視線、ハスキーな声が特徴的な女優さんでした。

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"Fanny och Alexander" på Dramaten (『ファニーとアレクサンデル』@ドラマーテン)

もうあと少しで2016年が終わってしまいますね…。

来年の目標は本ブログをもっと、ずっと、頻繁に!更新することです!

 

さて、今月半ばの最終授業日にご褒美としてドラマーテンに『ファニーとアレクサンデル』を観に行きました。まだこけら落としから間がないので、まだまだ公演は続くのですが、クリスマスムードを楽しむ一環として。

ヨーテボリ留学時には、クリスマスイブ近辺に古い映画館でrisgrynsgröt(スウェーデンでクリスマスの頃食されるライスプディング?というのでしょうか、甘いお米のミルク粥です)付きで本作が上映されました。「なんと本日の上映は昔ながらのフィルムです!」と得意げな紹介のあと始まった上映は、中断するわ、順番が入れ代わるわ、上下逆さまになるわ、ハチャメチャなものでした(笑)。そして「えー、これがフィルムというやつです…。来年はデジタル導入を考慮します」のコメントで締めくくられました。

『ファニーとアレクサンデル』はもともと5回連続のTV作品なので、3時間程度の劇場版はかなり削られています。私は5時間バージョンの方に慣れているので、このとき久しぶりに短縮版を見て、「あのシーンもあのシーンも消えてる!なんてこった!」と愕然とした記憶があります。

 

さて、劇場版の方に移りましょう。本作にも実は個人的な思い出があり、今回の観劇で念願叶いました。

本作の舞台化は、ノルウェー(2009年)とデンマーク(2010・2011年)が先で、本国スウェーデンは遅れをとり、2012年にドラマーテンで初演を迎えました。演出はStefan Larsson(ステファン・ラーション)で、彼はデンマークのオーフス劇場にて同作を既に演出しており、2度目にして初めてストックホルムでの上演となりました。*1

この初演時の2012年2月に、偶然にも私は初めてスウェーデンの地に足を踏み入れたのです。短い観光旅行でしたが、ドラマーテンやヘドヴィグ・エレオノーラ教会、ウプサラ大聖堂、バリマンが幼少時をよく過ごした祖母の家があった建物など、ゆかりの地を巡礼しました。書いてて恥ずかしいほどオタク趣味ですみません…(笑)。

当時はまだスウェーデン語の勉強を始めたばかりだったので、スウェーデン語での3時間の芝居は厳しいかなと躊躇いながらもチケット情報を調べたところ、見事に売り切れで、いずれにせよ観ずじまいでした。

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↑そのときのポスターの写真。

 

ステファンはバリマンと大変縁の深い役者・演出家です。

初演の際の舞台裏をStig Björkman(スティーグ・ビョルクマン)がFanny, Alexander och jag『ファニーとアレクサンデルと私』というドキュメンタリー映画(サイト上で48時間レンタル可能)に仕上げているのですが、そこで彼はドラマーテンでの80年代は自分にとってバリマンに尽きる、とキャストに語っています。芝居の何たるかをバリマン演出作品への出演を通じて学んだ、いわば演劇学校のようなものだった、とのこと。

シラーの『メアリー・スチュアート』、シェイクスピア『リア王』、チェーホフ『かもめ』などでバリマンの演出術を目にしてきた彼は、1997年にLars Norén(ラーシュ・ノレーン)のRumäner『ルーマニア人たち』で自身も演出家としてデビュー。1998年以来ドラマーテンで活躍し、『ある結婚の風景』や『秋のソナタ』などのバリマン作品の演出も手掛けているそうです。*2

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